Math Mar∞m

自由気ままに,書いていきます。

バンドの貼り合わせと 1-ハンドル手術

こんにちは。Math。です。

GW 中に参考文献の論文を読んでいました。一応,初等的証明なので難易度は高くありませんが,絵をこねくり回さないといけないので大変でした。あと,英語が苦手なので読むのもひと苦労しました…

この論文の中で,面白いというか「そういう見方もできるのか!」と少々驚いた補題があったので,それについて書いていきます。

バンドの貼り合わせ

局所的な 2 つの曲面1の間に,半ひねりしたバンドを図 1 のように貼り合わせることを考えます。

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図 1.バンドの貼り合わせ

これをバンドの貼り合わせとよぶことにします。

1-ハンドル手術

局所的な 2 つの曲面を,円筒で図 2 のように繋ぐことを考えます。トンネルやワームホールのイメージです。

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図 2.円筒による繋ぎ合わせ

これを 1-ハンドル手術とよぶことにします。

なお,図 2 のように綺麗な円筒でなくても大丈夫です。つまり,円筒が絡まっていたり,ねじられていても OK です。ただし,1-ハンドル手術で得られる曲面に,自己交差があってはいけません。

バンドの貼り合わせと 1-ハンドル手術

さて,この「バンドの貼り合わせ」と「1-ハンドル手術」に関して次の命題が成り立ちます。

命題

下図のように,互いに逆ひねりの 2 つのバンドの貼り合わせによって得られる曲面は,もとの 2 つの曲面に 1-ハンドル手術を施して得られる曲面と同値です。

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図 3.2 つのバンドの貼り合わせ

ここで言う「同値」とは,アンビエントアイソトピー変形で移り合うということです。つまり,図 3 の曲面を連続的に変形していき,最終的に,2 つの曲面が円筒で繋がっていることを見れば十分です。

証明

図 3 左の曲面について,手前の曲面を上に(または奥の曲面を下に)引き伸ばすと,図 4 のようになります。

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図 4.引き伸ばされた曲面

このとき,境界に(帽子のように)ツバを付けてあげれば,次のように円筒で繋がれていることが分かります。

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図 5.円筒で繋がった曲面

したがって,図 3 左の曲面は,もとの 2 つの曲面に 1-ハンドル手術を施して得られる曲面に同値です。図 3 右についても同様なので,命題が成り立ちます。■

おわりに

図 3 の曲面を見て,そこに円筒が隠れていたとは思いもしませんでした。実に面白いです。こういうことがあるから数学はやめられません。

あと,今回の証明は数式が一つもない代わりに絵がたくさん必要だったので,それらを用意するのが大変でした。余裕があれば,ツバを付けた図なども作成したいと思います。

参考文献

  • D. Bar-Natan, J. Fulman and L. H. Kauffman, An Elementary Proof That All Spanning Surfaces of a Link Are Tube-Equivalent, Journal of Knot Theory and Its Ramifications, vol. 7, No. 7, 1998, pp.873-879

  1. 全体として 1 つの曲面であっても問題ありません。

Laurent 多項式環の単元

こんにちは。Math。です。

勉強していて Laurent 多項式環の単元が出てきたので,それについて書いていきます。

Laurent 多項式環

 t不定元とします。

Laurent 多項式

次のように,負冪も許した  t の整数係数多項式  p(t)Laurent 多項式といいます。


        p(t) = c_{-r}t^{-r} + \cdots + c_{-1}t^{-1} + c_0 + c_1 t + \cdots + c_s t^s

ここで, c _ i\in\mathbb{Z} r,s\ge 0 です。

明らかなように,Laurent 多項式同士の和や積も Laurent 多項式です。したがって,次のことが言えます。

Laurent 多項式環

Laurent 多項式からなる環を Laurent 多項式環といい,ここでは  \Lambda で表します1

Laurent 多項式環の性質

言うまでもなく, \Lambda における零元,単位元はそれぞれ 0 と 1 です。また,普通の多項式環2とは違い,次が成り立ちます。

Laurent 多項式環の単元

 \Lambda の単元(逆元をもつ元)は  \pm t ^ i i\in\mathbb{Z})です。

証明

 \pm t ^ i たちが  \Lambda の単元であることはすぐに確かめられます。よって, \Lambda の単元がこれらしかないことを示していきます。

 p(t) \in \Lambda を単元とします。

ここで, p(t) の最小次数を  -r とし, q(t)\in\Lambda p(t) の逆元とするとき,

 \displaystyle
        1 = p(t)q(t) = t^r p(t) \cdot t^{-r}q(t)

とできます。つまり, t ^ rp(t) は単元です。しかも,その最小次数は 0 以上なので,これを改めて  p(t) と書けば, p(t) は負冪を持たない単元ということになります。

よって,単元  p(t) は負冪を持たないと仮定しても一般性を失いません。このとき, p(t) の最高次数を  n\ge 0 とし,


        p(t) = c_0 + c_1 t + \cdots + c_n t^n, \quad c_n \ne 0

とします。また, p(t) の逆元  q(t)\in\Lambda


        q(t) = d_{-r} t^{-r} + \cdots + d_{-n}t^{-n} + \cdots + d_{-1}t^{-1} + d_0 + d_1 t + \cdots d_s t^s

とします。ただし, -r\lt -n s\gt 0 です。

 p(t)q(t)=1 において係数比較をすれば, -r\le k\le n+s に対して

 \displaystyle
        \sum_{i+j=k} c_i d_j = \begin{cases}
        1 & k=0\\
        0 & k \ne 0
    \end{cases}

が成り立ちます。

 n=0 のときは直ちに  p(t)=\pm 1 が得られますので,以下では  n\gt 0 とします。

まず, k=n+s のほうから調べていきます。

 c _ nd _ s=0 および  c _ n\ne 0 より  d _ s=0 です。更に,


        c_{n-1}d_s + c_n d_{s-1} = 0, \quad d_s=0, \quad c_n \ne 0

より  d _ {s-1}=0 です。以下同様にして,


        d_s = d_{s-1} = \cdots = d_{-n+1} = 0

が成り立ちます。

次に, k=-r のほうから調べていきます。

そこで, d _ {-r}\ne 0 と仮定すると, c _ 0d _ {-r}=0 より  c _ 0=0 です。更に,


        c_0 d_{-r+1} + c_1 d_{-r} = 0, \quad c_0=0, \quad d_{-r} \ne 0

より  c _ 1=0 です。以下同様にして,


        c_0 = c_1 = \cdots = c_{n-1} = 0

が成り立ちます。このとき,


        0 = c_0 d_{-r+n} + c_1 d_{-r+n-1} + \cdots + c_n d_{-r} = c_n d_{-r}

ですが, c _ n\ne 0 なので矛盾します。つまり,背理法により  d _ {-r}=0 でなければなりません。

同じように, d _ {-r+1}\ne 0 と仮定すれば矛盾が導かれるので,やはり  d _ {-r+1}=0 です。これを繰り返すことで,


        d_{-r} = d_{-r+1} = \cdots = d_{-n-1} = 0

が成り立ちます。すなわち, q(t)=d _ {-n}t ^ {-n} と書けます。

このとき, c _ nd _ {-n}=1 より  d _ {-n}\ne 0 に注意すれば,


        c_0 = c_1 = \cdots = c_{n-1} = 0

であることが分かります。特に, c _ nd _ {-n}=1 ですから, c _ n=d _ {-n}=\pm 1 です。

したがって, p(t)=\pm t ^ n です。■

おわりに

恐らく正しいはずです。

簡単に証明できるものかと思っていたら,想像以上に大変でした。因数定理などを利用すればエレガントに証明できるんじゃないかとも思いましたが,あいにく思いつきませんでした…

ひとまず,Laurent 多項式環の単元は  \pm t ^ i の形をしていると分かったので満足です。

それでは。


  1.  \mathbb{Z}[t,t ^ {-1}] と表すこともできます。
  2. 負冪のない多項式環ということです。例えば, \mathbb{Z}[t] の単元は  \pm 1 のみです。

かわいい溢れる『わたなれ』3 巻の感想

こんにちは。Math。です。

待ちに待った,みかみてれん先生著『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の第 3 巻が発売されました。

嬉しすぎます。即買いです。

わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)3(ダッシュエックス文庫)

わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)3(ダッシュエックス文庫)

  • 著者:みかみてれん
  • イラスト:竹嶋えく
  • 出版社:集英社
  • 発売日:2021年4月23日

私がガールズ・ラブコメにハマったきっかけでもある本作品。第 1 巻はスパダリこと真唯が,第 2 巻は黒髪クール美少女の紗月さんがメインでした。

そしてついに,我らが大天使・紫陽花さんがメインの第 3 巻です。

「私、家出することにしたんだっ」

すべてはその一言から始まった。

夏休み、家族と喧嘩してしまった紫陽花さんは、意地になって家出すると言い出した! 一人旅は危なすぎでしょと焦ったわたしは、勢いでその旅に同行することに。

わたしが天使を守るんだ!

海沿いの町に泊まって、卓球をしたり温泉入ったり、紫陽花さんが甘えん坊妹になっちゃったり!? さらに真唯まで現れて、旅は一気に賑やかに。元気になった紫陽花さんも家族と和解して、一件落着。

——のはずだったんだけど。

わたしはずっと気づかなかった。紫陽花さんがどんな想いでわたしと一緒にいてくれたのかを。

出典:わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?) 3/みかみてれん/竹嶋 えく | 集英社の本 公式

あらすじの時点で最高は確信していたんですけど,蓋を開けてみると期待以上でしたね。

優しいが服を着て歩いてるような存在の紫陽花さんが怒るところも甘えるところもいたずらなところも,何もかもが可愛いです。ふと我に返って羞恥に悶える紫陽花さんも天使すぎて,れな子の心境には深く共感するばかりでした。

そして,紫陽花さんのそんな一面を引き出したれな子には,もはや称賛しかありません。普段はネガティブ思考全開だけれど,いざとなれば不器用ながらにも一生懸命,友達のために行動できるれな子には,1・2 巻に引き続き惚れ直しました。ほんと罪づくりな女(褒め言葉)です。もちろん,自ら墓穴を掘りにいく姿もれな子の魅力の一つです。

真唯が再び登場してからは物語が更に大きく動き出し,勢いが衰えることを知らずの最後の最後—— 348 ページからの流れと 351 ページ冒頭のあの一文ですよ。これまでの物語が一気にフラッシュバックしてあの一文に収束したときには,冗談抜きで全身に鳥肌が立ちました。

みかみてれん先生,感服です…

おわりに

1・2 巻に引けを取らない最高の 3 巻でした。

個人的には,クールを身に纏う紗月さんのあんな姿が見られるとは思っていなくて,棚からぼた餅でした。ごちそうさまです。それに,紗月さんからの命令を素直に守らないれな子,なかなかの大物です。あとで痛い目を見ることになりそう…

それと,真唯ママとの邂逅はどう響いてくるんでしょうか。気になります。

次はいよいよ,みんなの妹・小柳香穂ちゃんがメインとのことで,とても楽しみです。可愛い愛されキャラだけれど裏があるっぽい香穂ちゃんを,(恐らく)深く知ることができる第 4 巻。待ち遠しいです。

それでは。

P.S. みかみてれん先生原作の『もし、恋が見えたなら』も面白いのでぜひ〜

加群の定義と例

こんにちは。Math。です。

普段,数学をやっていても加群って全く使わない(あるいは意識していない)ので,いざ出てくると定義とかすっかり忘れてしまっています。

ということで,今回は加群についてです。

加群

 R を(単位的)環, M を可換群とします。また, 1\in R単位元とします。

加群

写像  \cdot:R\times M\ni(r,x)\mapsto r\cdot x\in M r\cdot x rx と書きます)が次を満たすとき,組  (M,\cdot) R-加群といいます。

  1.  \forall r\in R \forall x,y\in M r(x+y)=rx+ry
  2.  \forall r,r'\in R \forall x\in M (r+r')x=rx+r'x (rr')x=r(r'x)
  3.  \forall x\in M 1x=x

 R-加群というものもありますが,特に断らない限り,以下では左  R-加群のことを単に  R-加群と書きます。

 R-加群の定義は, r\in R を決めるたびに写像  M\ni x\mapsto rx\in M が定まると考えることもできます。すなわち, M R-加群であるということを「環準同型写像  \varphi:R\to\mathop{\mathrm{End}}M が定まること」と定義できます。

では,条件 i〜iii による定義を定義 1,環準同型写像による定義を定義 2 とするとき,これらの同値性を証明してみます。

同値性の証明

定義 1 を採用したとき,各  r\in R に対して


    \varphi(r)(x) := rx

写像  \varphi(r):M\to M を定めます。

このとき,条件 i より  \varphi(r)準同型写像です。また,条件 iii より  \varphi(1)=\mathrm{id}_M \mathop{\mathrm{End}}M単位元)です。

更に,条件 ii によって,任意の  r,r'\in R x\in M に対して,

 \begin{align}
        \varphi(r+r')(x) &= (r+r')x\\
        &= rx + r'x\\
        &= \varphi(r)(x) + \varphi(r')(x)\\
        &= (\varphi(r) + \varphi(r'))(x)
    \end{align}

および

 \begin{align}
        \varphi(rr')(x) &= (rr')x\\
        &= r(r'x)\\
        &= \varphi(r)(\varphi(r')(x))\\
        &= (\varphi(r)\varphi(r'))(x)
    \end{align}

なので, \varphi(\cdot):R\to\mathop{\mathrm{End}}M は環準同型写像です。よって,環準同型写像が定まりました。

一方,定義 2 を採用したとき,環準同型写像  \varphi:R\to\mathop{\mathrm{End}}M に対して,


        (r,x) \mapsto rx := \varphi(r)(x)

写像  R\times M\to M を定めます。

このとき, \varphi(r) が準同型であることから条件 i が成り立ちます。また, \varphi が環準同型であることから条件 ii,iii が成り立ちます。

したがって,定義 1 を採用すれば定義 2 の条件が,定義 2 を採用すれば定義 1 の条件がそれぞれ得られるので,この 2 つの定義は同値です。■

これより,どちらの定義を採用しても問題ないことが保証されました。なお,ここでは定義 1 のほうを採用します。

加群の例

 R はそれ自身で  R-加群です。当然と言えば当然で,環は加法について可換群ですし,結合則や分配法則も成り立つので,条件 i~iii を全て満たします。ほかにも,環  R の任意のイデアル R-加群です。

もう少し具体的な例を挙げると,実数(複素数)係数の  n 次正方行列からなる環  M _ n に対して, n 次元実(複素)ベクトル空間  V _ n M _ n-加群です。

実際,単位行列  E _ n\in M _ n と任意の行列  A,B\in M _ n,ベクトル  x,y\in V _ n に対して,

  1.  A(x+y)=Ax+Ay
  2.  (A+B)x=Ax+Bx (AB)x=A(Bx)
  3.  E _ nx=x

が成り立ちます。

零因子の存在

 R の元  r に対して, rr'=0 となる非零元  r'\in R が存在するとき, r零因子といいます。

特に,環によっては非零元同士の積が 0 になることもあります。それと似たようなことが, R-加群  M でも起こり得ます。

すなわち,ある  r\in R r\ne 0)と  x\in M x\ne 0)に対して, rx=0 ということが起こり得ます1

例えば,実数係数の 2 次正方行列からなる環  M _ 2 と,2 次元実ベクトル空間  V _ 2 について,非零な元として


    A=\begin{pmatrix}-2 & 1\\ 2 & -1\end{pmatrix}, \quad x=\begin{pmatrix}1\\ 2\end{pmatrix}

をとってくれば  Ax=0 が成り立ちます。

したがって,一般に  rx=0 だからと言って「 r=0 または  x=0」と言うことはできません。

おわりに

 rx=0 かつ  x\ne 0 のときに  r=0 が成り立つかどうか」という疑問から今回,加群を復習しようと思い立った次第です。

結論から言うと,前節の最後に書いたように, rx=0 かつ  x\ne 0 だとしても  r=0 とは限りません。

そりゃそうかって感じもするんですが,久々に加群を復習できたので結果としては良かったです。


  1. 全ての加群で起こるとは限りません。

私が持っている漫画(随時更新)

こんにちは。Math。です。

漫画にハマって早数年。気がつけば山ほど漫画を集めてました。

当初はラブコメ作品ばかりでしたが,それから少しずつ他ジャンルにも手を出すようになりまして,今では

  • 恋愛・ラブコメ
  • ギャグ・コメディ
  • バトル・アクション
  • 百合・GL

あたりに落ち着いています。

半年前くらいに『わたなれ』を読んでから,ここ最近は特に,百合作品やそれに近いジャンルの作品を読んでいる気がします。

今回は,私の持っている漫画(+ラノベ・小説)をご紹介したいと思います1

持っている作品

私が持っている作品たちです。読み返すたびに前回とは違った発見があるので面白いです。

なお,太字は連載中や最終巻が未発売のものを表します。

あ行

か行

さ行

た行

な行

は行

ま行

や行

ら行

  • ロンリーガールに逆らえない一迅社

わ行

  • わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)集英社
  • わたしの幸せな結婚KADOKAWA
  • 私の百合はお仕事です!一迅社
  • 私を喰べたい、ひとでなしKADOKAWA

読んでいる作品

持ってはいないけど,現在進行形で読んでいる作品や最終話まで読んだ作品たちです。

おわりに

以上が私の持っている漫画やラノベ,小説になります。

集計してみたところ,持っているのは 81 作品(580 冊以上)でした。今のところ紙単行本派2なので,そろそろ新しい本棚を買わないと床に積んでいくことになりそうです…

ちなみに,「読んでいる作品」も含めると 100 作品以上です。

今度は,好きな作品について書いていけたら良いなぁと思っています。あと,オススメ作品があったらぜひ教えてください〜

最後に,『不死の葬儀師』の 3 巻以降発刊と『テレパス皆葉と読めない彼女』の単行本化してほしい…


  1. 紹介よりも管理という意味合いのほうが強いです。
  2. 紙への強いこだわりはないです。ただ単にタブレットを持っていないのと,紙のほうが読み慣れているというだけです。

Alexander の補題

こんにちは。Math。です。

位相幾何学に関する命題の一つに,「Alexander の補題」とよばれるものがあります。シンプルな内容ゆえに忘れてしまいがちなんですが,意外と重要な命題なので備忘録として書いておきます。

Alexander の補題

 n 次元球に同相な 2 つの位相空間の間の写像に関する命題で,証明もそこまで難しくないです。以下, A,B位相空間 D ^ n n 次元単位球とします。

Alexander の補題

 A,B\cong D ^ n とするとき,同相写像  h: \partial A\to\partial B同相写像  \bar{h}:A\to B に拡張されます。

ここで, \cong は同相であること, \partial X位相空間  X の境界を表します。また,写像  h:\partial A\to\partial B写像  \bar{h}:A\to B に拡張されるとは, \bar{h}\rvert_{\partial A}=h が成り立つことをいいます。

では,証明していきます。

証明

まず, A=B=D ^ n の場合を証明します。そこで, D ^ n

 
        D^n = \{ tx \mid x \in \partial D^n, \ 0 \le t \le 1 \}

と表すことにします。このとき,同相写像  h:\partial D ^ n\to\partial D ^ n と任意の  tx\in D ^ n に対して,


        \bar{h}(tx) := t \cdot h(x)

写像  \bar{h}:D ^ n\to D ^ n を定義します。

ここで,原点  0\in D ^ n t=0)では  x\in\partial D ^ n不定性がありますが, \bar{h}(0)=0 なので問題ありません。つまり, \bar{h} は well-defined です。

同様にして,

 
        \bar{h'}(tx) := t \cdot h^{-1}(x)

で定義された写像  \bar{h'}:D ^ n\to D ^ n も well-defined です。

すると,その定め方から  \bar{h} \bar{h'} は互いに逆写像であり,かつ,どちらも連続です。すなわち, \bar{h}同相写像です。しかも,任意の  x\in\partial D ^ n t=1)に対して


        \bar{h}\rvert_{\partial D^n}(x) = \bar{h}(x) = h(x)

ですから, h \bar{h} に拡張されました。

以上を踏まえた上で,一般の  A,B\cong D ^ n の場合を証明します。

 A D ^ n と同相なので,同相写像  f:A\to D ^ n が存在します。また, f\rvert _ {\partial A}:\partial A\to\partial D ^ n同相写像となります。

 B についても同様に,同相写像  g:B\to D ^ n が存在し, g\rvert _ {\partial B}:\partial B\to\partial D ^ n同相写像となります。

このとき,同相写像  h:\partial A\to\partial B に対して,


        k := g\rvert_{\partial B} \circ h \circ (f\rvert_{\partial A})^{-1}

写像  k:\partial D ^ n\to\partial D ^ n を定義します。同相写像たちの合成なので  k同相写像です。よって,先ほどの議論により, k同相写像  \bar{k}:D ^ n\to D ^ n に拡張されます。

この  \bar{k} に対して,


        \bar{h} := g^{-1} \circ \bar{k} \circ f

写像  \bar{h}:A\to B を定めると,これは  h の拡張になっています。

実際,同相写像たちの合成なので, \bar{h}同相写像であることは明らかです。また,任意の  x\in\partial A に対して,

 \begin{align}
        \bar{h}\rvert_{\partial A}(x) &= (g^{-1} \circ \bar{k} \circ f)\rvert_{\partial A}(x)\\
        &= (g\rvert_{\partial B})^{-1} \circ \bar{k}\rvert_{\partial D^n} \circ f\rvert_{\partial A}(x)\\
        &= (g\rvert_{\partial B})^{-1} \circ k \circ f\rvert_{\partial A}(x)\\
        &= h(x)
    \end{align}

なので  \bar{h}\rvert_{\partial A}=h が成り立ちます。■

おわりに

私は “Alexander” を「アレクサンダー」と発音しています。

音楽バンドの [Alexandros] を「アレキサンドロス」と発音するせいか,初めの頃は「アレサンダー」と読んでいました1。しかし,ほとんどのサイトで「アレサンダー」と書かれていたのでそちらに合わせましたが,イマイチ正しい発音が分かりません…

もしかしたら,どちらも正しい発音なのかもしれません。海外の人名に詳しい方や分かる方がいらっしゃれば,ぜひ教えてください。

参考文献

  • D. Rolfsen, Knots and Links, AMS Chelsea Publishing, vol. 346, 1976, p.10

  1. 『FF 零式』に「アレキサンダー」っていう言葉が出ていたような気もするので,その影響もあるかもしれません。

空気抵抗がある場合の最遠投射角

こんにちは。Math。です。

パソコンのフォルダを整理していたら,数学などに関するメモやら PDF やらがいくつか出てきました。ほとんどはネタにもできないような内容であったり,途中で書き終えていたりと使えないんですが,中には使えそうなものもありました。

というわけで,今回はその中の一つ,「空気抵抗がはたらく場合における最遠投射角の式」について書いていきます。

運動方程式を立てる

図 1 のように,鉛直上向きに  y 軸をとり,水平方向に  x 軸をとります。このとき, x 軸がちょうど地表を表しているとします。

そして,質量  m の物体を原点  \mathrm{O} から  x 軸正の向きに角度  \theta,速度  v_0 で投げたとします。ただし, \displaystyle 0\lt\theta\lt\frac{\pi}{2} v _ 0\gt 0 です。

f:id:MathMaru:20210413154223p:plain:w400
図 1.斜方投射

更に,この物体には重力加速度  g と,速度に比例する空気抵抗(比例定数: k\gt 0)がはたらくものとします。

f:id:MathMaru:20210413155646p:plain:w250
図 2.運動方向と外力の向き

時刻  t における物体の  x 座標, y 座標をそれぞれ  x(t) y(t) と表すとき,物体の運動方程式は次のようになります。なお, \dot{x} は時刻  t による  x の 1 階微分 \ddot{x} は 2 階微分を表します1

ここで,物体を時刻  t=0 に投げたとすれば,この運動方程式の初期条件は


    x(0) = y(0) = 0, \quad \dot{x}(0) = v_0 \cos\theta, \quad \dot{y}(0) = v_0 \sin\theta

となります。以下では,この初期条件のもとで運動方程式を解いていきます。

運動方程式を解く

どちらも 2 階線形微分方程式ですが,速度を未知関数とすることで 1 階線形微分方程式に帰着できます。

 x 軸方向について

 v_x(t):=\dot{x}(t) とおくと, x 軸方向の運動方程式は次のように書き換えられます。


    m\dot{v}_x = -kv_x

これはすぐに解くことができて,初期条件  v _ x(0)=\dot{x}(0)=v _ 0\cos\theta に注意すれば

 \displaystyle
    \dot{x}(t) = v_x(t) = v_0 e^{-\frac{k}{m}t} \cos\theta

と求まります。更に,初期条件  x(0)=0 のもとでこの両辺を  t積分すれば

 \displaystyle
    x(t) = \frac{mv_0}{k} (1 - e^{-\frac{k}{m}t}) \cos\theta

と求まります。

これより, x 軸方向の変位  x(t) と速度  \dot{x}(t) のグラフの概形は図 3 のようになります。

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図 3. x 軸方向の運動(左:変位,右:速度)

グラフを見てもらうと分かるように,時間が経つにつれて速度は 0 に近づいていきます。また,いくら時間が経とうとも距離  \displaystyle\frac{mv_0}{k}\cos\theta までは飛ばないことも分かります。

 y 軸方向について

 x 軸方向に比べてやや複雑ですが,手順は全く同じです。先ほどと同様に  v_y(t):=\dot{y}(t) とおいて, y 軸方向の運動方程式を次のように書き換えます。


    m\dot{v}_y = -mg - kv_y

これは比較的簡単に解くことができて,初期条件  v _ y(0)=\dot{y}(0)=v _ 0\sin\theta に注意すれば

 \displaystyle
    \dot{y}(t) = v_y(t) = \biggl(\frac{mg}{k} + v_0\sin\theta\biggr) e^{-\frac{k}{m}t} - \frac{mg}{k}

と求まります。更に,初期条件  y(0)=0 のもとで,この両辺を  t積分すれば

 \displaystyle
    y(t) = \frac{m}{k}\biggl(\frac{mg}{k} + v_0\sin\theta\biggr) (1 - e^{-\frac{k}{m}t}) - \frac{mg}{k}t

と求まります。

これより, y 軸方向の変位  y(t) と速度  \dot{y}(t) のグラフの概形は図 4 のようになります。

f:id:MathMaru:20210414122913p:plain
図 4. y 軸方向の運動(左:変位,右:速度)

これもグラフから,時間の経過とともに落下距離が増えていくことや,落下速度が  \displaystyle\frac{mg}{k} を超えないことなどが分かります。


以上より,この物体の運動(の軌跡)は次のように表せます。

物体の運動
 \left\{\begin{align}
        x(t) &= \frac{mv_0}{k} (1 - e^{-\frac{k}{m}t}) \cos\theta\\
        y(t) &= \frac{m}{k}\biggl(\frac{mg}{k} + v_0\sin\theta\biggr) (1 - e^{-\frac{k}{m}t}) - \frac{mg}{k}t
    \end{align}\right.\tag{1}

最遠投射角

得られた式  (1) を使って,物体の飛距離が最大となるような投射角(最遠投射角 \theta_m を求めていきます。ただ,式  (1) のままでは文字が多くてややこしいので,無次元量

 \displaystyle
    \hat{x} := \frac{kx}{mv_0}, \quad \hat{y} := \frac{k^2 y}{m^2 g}, \quad r := \frac{kv_0}{mg}, \quad \tau := \frac{k}{m}t

を導入して,式  (1) を次のように無次元化してあげます。

物体の運動(無次元化 ver.)
 \left\{\begin{align}
        \hat{x}(\tau) &= (1 - e^{-\tau}) \cos\theta\\
        \hat{y}(\tau) &= (1 + r\sin\theta) (1 - e^{-\tau}) - \tau
    \end{align}\right.

さて,最遠投射角を求めるためには,飛距離と投射角の関係を知る必要があります。そこで,まずは無次元化飛距離を求めていきます。

…と言いたいところなんですが,そう上手くはいきません。

飛距離を求めるためには, \hat{y}(\tau) が再び 0 となる無次元化時刻  \tau\gt 0 を求める必要があります。しかし, \hat{y}(\tau) の式には  \tau の 1 次関数と指数関数が混在していて,初等的に解くことができません。なので,少し工夫します。

どうするかというと, \hat{x}(\tau) \hat{y}(\tau) の式を連立させて  \tau を消去します。 \hat{x}(\tau) の式から

 \displaystyle
    1 - e^{-\tau} = \frac{\hat{x}}{\cos\theta}, \quad \tau = - \log \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta}\biggr)

と変形できるので,それぞれを  \hat{y}(\tau) の式に代入することで

 \displaystyle
    \hat{y} = (1 + r\sin\theta)\frac{\hat{x}}{\cos\theta} + \log \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta}\biggr)

を得ます。よって,この式で  \hat{y}=0 とすることで,無次元化飛距離  \hat{x} の満たす方程式が得られます。

無次元化飛距離が満たす式
 \displaystyle
        0 = (1 + r\sin\theta)\frac{\hat{x}}{\cos\theta} + \log \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta}\biggr)
    \tag{2}

ただし, \hat{x}=0 は自明な解なので,以下では  \hat{x}\gt 0 とします。

このとき,投射角  \theta を決めてあげると,飛距離  \hat{x} は唯一つに定まります2。すなわち, \hat{x} \theta の関数と考えることができます。特に,最遠投射角  \theta _ m においては  \displaystyle\frac{d\hat{x}}{d\theta}(\theta  _ m)=0 を満たします。

このことに注意して,式  (2) の両辺を  \theta微分して  \theta=\theta _ m を代入すると

 \displaystyle
    0 = r\hat{x} + \frac{\hat{x}\sin\theta_m}{\cos^2\theta_m}\Biggl[1 + r\sin\theta_m - \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta_m}\biggr)^{-1}\Biggr]

を得ます。 \hat{x}\gt 0 なので,この式は更に

 \displaystyle
    0 = r + \frac{\sin\theta_m}{\cos^2\theta_m}\Biggl[1 + r\sin\theta_m - \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta_m}\biggr)^{-1}\Biggr]

と書けます。よって,この式を  \hat{x} について解き,改めて式  (2) に代入することで, \theta_m の満たす式が得られます。

最遠投射角が満たす式
 \displaystyle
        \biggl(1 + \frac{r}{\sin\theta_m}\biggr)\biggl[\log\biggl(1 + \frac{r}{\sin\theta_m}\biggr) - 1\biggr] = r^2 - 1
    \tag{3}

 r=1 の場合

 (3) の右辺が 0 となるので,この式を満たすのは

 \displaystyle
    1 + \frac{1}{\sin\theta_m} = 0 \quad \mathrm{or} \quad \log\biggl(1 + \frac{1}{\sin\theta_m}\biggr) = 1

のときです。ただし,左の式を満たす  \theta _ m は存在しないので,もし存在するならば右の式を満たします。そこで,右の式を  \sin\theta _ m について解くと

 \displaystyle
    \sin\theta_m = \frac{1}{e-1}

となり,これを満たす  \theta _ m は存在します。実際, \theta _ m\approx 35^\circ です。

 r \ne 1 の場合

 \displaystyle\rho:=1+\frac{r}{\sin\theta _ m} とおいて式  (3) を式変形していくと

 \displaystyle
    \frac{r^2-1}{\rho} e^{\frac{r^2-1}{\rho}} = \frac{r^2-1}{e}

とできます3

あいにく,ここから  \theta _ m について初等的に解くことはできませんが,Lambert の  W 関数4とよばれる特殊関数を用いても良いなら,次のようにして解くことができます。

(i) r ^ 2-1\gt 0 の場合

 \displaystyle
    \frac{r^2-1}{\rho} = W\biggl(\frac{r^2-1}{e}\biggr)

と表せるので,更に計算していくことで

 \displaystyle
    \sin\theta_m = r\biggl(\frac{r^2-1}{W((r^2-1)e^{-1})} - 1\biggr)^{-1}

となります。 r ^ 2-1\gt 0 だったので, W を主枝  W_0 に代えても同じです。

(ii) r ^ 2-1\lt 0 の場合

 \displaystyle
    -1 \lt -\frac{1}{\rho} \lt \frac{r^2-1}{\rho} \lt 0

であることに注意すれば,主枝  W _ 0 を用いて

 \displaystyle
    \frac{r^2-1}{\rho} = W_0\biggl(\frac{r^2-1}{e}\biggr)

と表せます。よって,全く同様に

 \displaystyle
    \sin\theta_m = r\biggl(\frac{r^2-1}{W_0((r^2-1)e^{-1})} - 1\biggr)^{-1}

を得ます。

(i)と(ii)より, r\ne 1 の場合における最遠投射角  \theta _ m は次のように書けます。

最遠投射角の式
 \displaystyle
        \theta_m = \sin^{-1} \Biggl[ r\biggl(\frac{r^2-1}{W_0((r^2-1)e^{-1})} - 1\biggr)^{-1} \Biggr]

おわりに

かなり大変でしたが,空気抵抗がはたらく場合における最遠投射角の式を求めることができました。記事として書き直すために改めて自分でも計算していたんですが,過去の自分のモチベーションとか技巧に感心してしまいました。今の自分にできるとは到底思えないです。

ちなみに,いろんな数値で計算してみると分かりますが, \theta _ m が 45 \circ 以外になることは普通にあります。すなわち,空気抵抗を考慮した場合,一番よく飛ぶ角度は 45 \circ とは限らないということが分かります。

参考文献


  1.  \dot{x} x 軸方向の速度, \ddot{x} x 軸方向の加速度です。
  2.  \hat{y}(\tau) のグラフを描くと, \hat{y}=0 となる  \tau が 2 つ(一つは自明な解  \tau=0)あることが分かります。そして, \hat{x} \tau が一対一に対応していることから, \hat{y}=0 となる  \hat{x} も 2 つあります(一つは  \hat{x}=0)。
  3. 式変形の際, r ^ 2-1 の符号に注意する必要があります。
  4. 大雑把に言うと, y=xe ^ x逆関数  x=W(y) のことです。