Alexander の補題
こんにちは。Math。です。
位相幾何学に関する命題の一つに,「Alexander の補題」とよばれるものがあります。シンプルな内容ゆえに忘れてしまいがちなんですが,意外と重要な命題なので備忘録として書いておきます。
Alexander の補題
次元球に同相な 2 つの位相空間の間の写像に関する命題で,証明もそこまで難しくないです。以下, を位相空間, を 次元単位球とします。
ここで, は同相であること, は位相空間 の境界を表します。また,写像 が写像 に拡張されるとは, が成り立つことをいいます。
では,証明していきます。
まず, の場合を証明します。そこで, を
と表すことにします。このとき,同相写像 と任意の に対して,
で写像 を定義します。
ここで,原点 ()では に不定性がありますが, なので問題ありません。つまり, は well-defined です。
同様にして,
で定義された写像 も well-defined です。
すると,その定め方から と は互いに逆写像であり,かつ,どちらも連続です。すなわち, は同相写像です。しかも,任意の ()に対して
ですから, は に拡張されました。
以上を踏まえた上で,一般の の場合を証明します。
は と同相なので,同相写像 が存在します。また, は同相写像となります。
についても同様に,同相写像 が存在し, は同相写像となります。
このとき,同相写像 に対して,
で写像 を定義します。同相写像たちの合成なので は同相写像です。よって,先ほどの議論により, は同相写像 に拡張されます。
この に対して,
で写像 を定めると,これは の拡張になっています。
実際,同相写像たちの合成なので, が同相写像であることは明らかです。また,任意の に対して,
なので が成り立ちます。■
おわりに
私は “Alexander” を「アレクサンダー」と発音しています。
音楽バンドの [Alexandros] を「アレキサンドロス」と発音するせいか,初めの頃は「アレキサンダー」と読んでいました1。しかし,ほとんどのサイトで「アレクサンダー」と書かれていたのでそちらに合わせましたが,イマイチ正しい発音が分かりません…
もしかしたら,どちらも正しい発音なのかもしれません。海外の人名に詳しい方や分かる方がいらっしゃれば,ぜひ教えてください。
参考文献
- D. Rolfsen, Knots and Links, AMS Chelsea Publishing, Vol. 346, 1976, p.10