バンドの貼り合わせと 1-ハンドル手術
こんにちは。Math。です。
GW 中に参考文献の論文を読んでいました。一応,初等的証明なので難易度は高くありませんが,絵をこねくり回さないといけないので大変でした。あと,英語が苦手なので読むのもひと苦労しました…
この論文の中で,面白いというか「そういう見方もできるのか!」と少々驚いた補題があったので,それについて書いていきます。
バンドの貼り合わせ
局所的な 2 つの曲面1の間に,半ひねりしたバンドを図 1 のように貼り合わせることを考えます。
これをバンドの貼り合わせとよぶことにします。
1-ハンドル手術
局所的な 2 つの曲面を,円筒で図 2 のように繋ぐことを考えます。トンネルやワームホールのイメージです。
これを 1-ハンドル手術とよぶことにします。
なお,図 2 のように綺麗な円筒でなくても大丈夫です。つまり,円筒が絡まっていたり,ねじられていても OK です。ただし,1-ハンドル手術で得られる曲面に,自己交差があってはいけません。
バンドの貼り合わせと 1-ハンドル手術
さて,この「バンドの貼り合わせ」と「1-ハンドル手術」に関して次の命題が成り立ちます。
下図のように,互いに逆ひねりの 2 つのバンドの貼り合わせによって得られる曲面は,もとの 2 つの曲面に 1-ハンドル手術を施して得られる曲面と同値です。
ここで言う「同値」とは,アンビエントアイソトピー変形で移り合うということです。つまり,図 3 の曲面を連続的に変形していき,最終的に,2 つの曲面が円筒で繋がっていることを見れば十分です。
図 3 左の曲面について,手前の曲面を上に(または奥の曲面を下に)引き伸ばすと,図 4 のようになります。
このとき,境界に(帽子のように)ツバを付けてあげれば,次のように円筒で繋がれていることが分かります。
したがって,図 3 左の曲面は,もとの 2 つの曲面に 1-ハンドル手術を施して得られる曲面に同値です。図 3 右についても同様なので,命題が成り立ちます。■
おわりに
図 3 の曲面を見て,そこに円筒が隠れていたとは思いもしませんでした。実に面白いです。こういうことがあるから数学はやめられません。
あと,今回の証明は数式が一つもない代わりに絵がたくさん必要だったので,それらを用意するのが大変でした。余裕があれば,ツバを付けた図なども作成したいと思います。
参考文献
- D. Bar-Natan, J. Fulman and L. H. Kauffman, An Elementary Proof That All Spanning Surfaces of a Link Are Tube-Equivalent, Journal of Knot Theory and Its Ramifications, Vol. 7, No. 7, 1998, pp.873-879
- 全体として 1 つの曲面であっても問題ありません。↩