Math Mar∞m

自由気ままに,書いていきます。

私が持っている漫画(随時更新)

2022/06/19:更新しました。

こんにちは。ますまるです。

漫画にハマって早数年。気がつけば山ほど漫画を集めてました。

仕事を始めてからは,平日に新刊を買って休日に読む,というスタイルが身に付きました。

ただ最近,最寄りにあった3店舗のTSUTAYAのうち2店舗が閉店するという事態に陥り,本が売ってなくて買えないということも増えてきました。それゆえ,ときどき通販で買うことも増え,なんだか「現代らしい」感じになってきてちょっぴり嬉しいです。

というわけで今回は,私の持っている漫画(+ラノベ・小説)をご紹介したいと思います1

持っている作品(140作品)

私が持っている作品たちです。読み返すたびに前回とは違った発見があるので面白いです。

太字は連載中のものを表します。

読んでいる・読んだ作品(73作品)

持ってはいないけど現在進行形で読んでいる作品や,最終話まで読んだ作品たちです。

おわりに

以上が,私の持っている漫画(+ラノベ・小説)や,読んでいる・読んだ作品たちになります。

集計してみたところ,持っているのは 140 作品でした。今はまだ紙単行本派2なので,そろそろ新しい本棚を買わないと床に積んでいくことになりそうです…

最後に,『不死の葬儀師』の 3 巻以降発刊と『テレパス皆葉と読めない彼女』の単行本化してほしい…

P.S. ついに本棚から本が溢れ出しました…


  1. 紹介よりも管理という意味合いのほうが強いです。
  2. 紙への強いこだわりはないです。ただ単にタブレットを持っていないのと,紙のほうが読み慣れているというだけです。

Alexander の補題

こんにちは。Math。です。

位相幾何学に関する命題の一つに,「Alexander の補題」とよばれるものがあります。シンプルな内容ゆえに忘れてしまいがちなんですが,意外と重要な命題なので備忘録として書いておきます。

Alexander の補題

 n 次元球に同相な 2 つの位相空間の間の写像に関する命題で,証明もそこまで難しくないです。以下, A,B位相空間 D ^ n n 次元単位球とします。

Alexander の補題

 A,B\cong D ^ n とするとき,同相写像  h: \partial A\to\partial B同相写像  \bar{h}:A\to B に拡張されます。

ここで, \cong は同相であること, \partial X位相空間  X の境界を表します。また,写像  h:\partial A\to\partial B写像  \bar{h}:A\to B に拡張されるとは, \bar{h}\rvert_{\partial A}=h が成り立つことをいいます。

では,証明していきます。

証明

まず, A=B=D ^ n の場合を証明します。そこで, D ^ n

 
        D^n = \{ tx \mid x \in \partial D^n, \ 0 \le t \le 1 \}

と表すことにします。このとき,同相写像  h:\partial D ^ n\to\partial D ^ n と任意の  tx\in D ^ n に対して,


        \bar{h}(tx) := t \cdot h(x)

写像  \bar{h}:D ^ n\to D ^ n を定義します。

ここで,原点  0\in D ^ n t=0)では  x\in\partial D ^ n不定性がありますが, \bar{h}(0)=0 なので問題ありません。つまり, \bar{h} は well-defined です。

同様にして,

 
        \bar{h'}(tx) := t \cdot h^{-1}(x)

で定義された写像  \bar{h'}:D ^ n\to D ^ n も well-defined です。

すると,その定め方から  \bar{h} \bar{h'} は互いに逆写像であり,かつ,どちらも連続です。すなわち, \bar{h}同相写像です。しかも,任意の  x\in\partial D ^ n t=1)に対して


        \bar{h}\rvert_{\partial D^n}(x) = \bar{h}(x) = h(x)

ですから, h \bar{h} に拡張されました。

以上を踏まえた上で,一般の  A,B\cong D ^ n の場合を証明します。

 A D ^ n と同相なので,同相写像  f:A\to D ^ n が存在します。また, f\rvert _ {\partial A}:\partial A\to\partial D ^ n同相写像となります。

 B についても同様に,同相写像  g:B\to D ^ n が存在し, g\rvert _ {\partial B}:\partial B\to\partial D ^ n同相写像となります。

このとき,同相写像  h:\partial A\to\partial B に対して,


        k := g\rvert_{\partial B} \circ h \circ (f\rvert_{\partial A})^{-1}

写像  k:\partial D ^ n\to\partial D ^ n を定義します。同相写像たちの合成なので  k同相写像です。よって,先ほどの議論により, k同相写像  \bar{k}:D ^ n\to D ^ n に拡張されます。

この  \bar{k} に対して,


        \bar{h} := g^{-1} \circ \bar{k} \circ f

写像  \bar{h}:A\to B を定めると,これは  h の拡張になっています。

実際,同相写像たちの合成なので, \bar{h}同相写像であることは明らかです。また,任意の  x\in\partial A に対して,

 \begin{align}
        \bar{h}\rvert_{\partial A}(x) &= (g^{-1} \circ \bar{k} \circ f)\rvert_{\partial A}(x)\\
        &= (g\rvert_{\partial B})^{-1} \circ \bar{k}\rvert_{\partial D^n} \circ f\rvert_{\partial A}(x)\\
        &= (g\rvert_{\partial B})^{-1} \circ k \circ f\rvert_{\partial A}(x)\\
        &= h(x)
    \end{align}

なので  \bar{h}\rvert_{\partial A}=h が成り立ちます。■

おわりに

私は “Alexander” を「アレクサンダー」と発音しています。

音楽バンドの [Alexandros] を「アレキサンドロス」と発音するせいか,初めの頃は「アレサンダー」と読んでいました1。しかし,ほとんどのサイトで「アレサンダー」と書かれていたのでそちらに合わせましたが,イマイチ正しい発音が分かりません…

もしかしたら,どちらも正しい発音なのかもしれません。海外の人名に詳しい方や分かる方がいらっしゃれば,ぜひ教えてください。

参考文献

  • D. Rolfsen, Knots and Links, AMS Chelsea Publishing, Vol. 346, 1976, p.10

  1. 『FF 零式』に「アレキサンダー」っていう言葉が出ていたような気もするので,その影響もあるかもしれません。

空気抵抗がある場合の最遠投射角

こんにちは。Math。です。

パソコンのフォルダを整理していたら,数学などに関するメモやら PDF やらがいくつか出てきました。ほとんどはネタにもできないような内容であったり,途中で書き終えていたりと使えないんですが,中には使えそうなものもありました。

というわけで,今回はその中の一つ,「空気抵抗がはたらく場合における最遠投射角の式」について書いていきます。

運動方程式を立てる

図 1 のように,鉛直上向きに  y 軸をとり,水平方向に  x 軸をとります。このとき, x 軸がちょうど地表を表しているとします。

そして,質量  m の物体を原点  \mathrm{O} から  x 軸正の向きに角度  \theta,速度  v_0 で投げたとします。ただし, \displaystyle 0\lt\theta\lt\frac{\pi}{2} v _ 0\gt 0 です。

f:id:MathMaru:20210413154223p:plain:w400
図 1.斜方投射

さらに,この物体には重力加速度  g と,速度に比例する空気抵抗(比例定数: k\gt 0)がはたらくものとします。

f:id:MathMaru:20210413155646p:plain:w250
図 2.運動方向と外力の向き

時刻  t における物体の  x 座標, y 座標をそれぞれ  x(t) y(t) と表すとき,物体の運動方程式は次のようになります。なお, \dot{x} は時刻  t による  x の 1 階微分 \ddot{x} は 2 階微分を表します1

ここで,物体を時刻  t=0 に投げたとすれば,この運動方程式の初期条件は


    x(0) = y(0) = 0, \quad \dot{x}(0) = v_0 \cos\theta, \quad \dot{y}(0) = v_0 \sin\theta

となります。以下では,この初期条件のもとで運動方程式を解いていきます。

運動方程式を解く

どちらも 2 階線形微分方程式ですが,速度を未知関数とすることで 1 階線形微分方程式に帰着できます。

 x 軸方向について

 v_x(t):=\dot{x}(t) とおくと, x 軸方向の運動方程式は次のように書き換えられます。


    m\dot{v}_x = -kv_x

これはすぐに解くことができて,初期条件  v _ x(0)=\dot{x}(0)=v _ 0\cos\theta に注意すれば

 \displaystyle
    \dot{x}(t) = v_x(t) = v_0 e^{-\frac{k}{m}t} \cos\theta

と求まります。さらに,初期条件  x(0)=0 のもとでこの両辺を  t積分すれば

 \displaystyle
    x(t) = \frac{mv_0}{k} (1 - e^{-\frac{k}{m}t}) \cos\theta

と求まります。

これより, x 軸方向の変位  x(t) と速度  \dot{x}(t) のグラフの概形は図 3 のようになります。

f:id:MathMaru:20210414122907p:plain
図 3. x 軸方向の運動(左:変位,右:速度)

グラフを見てもらうと分かるように,時間が経つにつれて速度は 0 に近づいていきます。また,いくら時間が経とうとも距離  \displaystyle\frac{mv_0}{k}\cos\theta までは飛ばないことも分かります。

 y 軸方向について

 x 軸方向に比べてやや複雑ですが,手順は全く同じです。先ほどと同様に  v_y(t):=\dot{y}(t) とおいて, y 軸方向の運動方程式を次のように書き換えます。


    m\dot{v}_y = -mg - kv_y

これは比較的簡単に解くことができて,初期条件  v _ y(0)=\dot{y}(0)=v _ 0\sin\theta に注意すれば

 \displaystyle
    \dot{y}(t) = v_y(t) = \biggl(\frac{mg}{k} + v_0\sin\theta\biggr) e^{-\frac{k}{m}t} - \frac{mg}{k}

と求まります。さらに,初期条件  y(0)=0 のもとで,この両辺を  t積分すれば

 \displaystyle
    y(t) = \frac{m}{k}\biggl(\frac{mg}{k} + v_0\sin\theta\biggr) (1 - e^{-\frac{k}{m}t}) - \frac{mg}{k}t

と求まります。

これより, y 軸方向の変位  y(t) と速度  \dot{y}(t) のグラフの概形は図 4 のようになります。

f:id:MathMaru:20210414122913p:plain
図 4. y 軸方向の運動(左:変位,右:速度)

これもグラフから,時間の経過とともに落下距離が増えていくことや,落下速度が  \displaystyle\frac{mg}{k} を超えないことなどが分かります。


以上より,この物体の運動(の軌跡)は次のように表せます。

物体の運動
 \left\{\begin{align}
        x(t) &= \frac{mv_0}{k} (1 - e^{-\frac{k}{m}t}) \cos\theta\\
        y(t) &= \frac{m}{k}\biggl(\frac{mg}{k} + v_0\sin\theta\biggr) (1 - e^{-\frac{k}{m}t}) - \frac{mg}{k}t
    \end{align}\right.\tag{1}

最遠投射角

得られた式  (1) を使って,物体の飛距離が最大となるような投射角(最遠投射角 \theta_m を求めていきます。ただ,式  (1) のままでは文字が多くてややこしいので,無次元量

 \displaystyle
    \hat{x} := \frac{kx}{mv_0}, \quad \hat{y} := \frac{k^2 y}{m^2 g}, \quad r := \frac{kv_0}{mg}, \quad \tau := \frac{k}{m}t

を導入して,式  (1) を次のように無次元化してあげます。

物体の運動(無次元化 ver.)
 \left\{\begin{align}
        \hat{x}(\tau) &= (1 - e^{-\tau}) \cos\theta\\
        \hat{y}(\tau) &= (1 + r\sin\theta) (1 - e^{-\tau}) - \tau
    \end{align}\right.

さて,最遠投射角を求めるためには,飛距離と投射角の関係を知る必要があります。そこで,まずは無次元化飛距離を求めていきます。

…と言いたいところなんですが,そう上手くはいきません。

飛距離を求めるためには, \hat{y}(\tau) が再び 0 となる無次元化時刻  \tau\gt 0 を求める必要があります。しかし, \hat{y}(\tau) の式には  \tau の 1 次関数と指数関数が混在していて,初等的に解くことができません。なので,少し工夫します。

どうするかというと, \hat{x}(\tau) \hat{y}(\tau) の式を連立させて  \tau を消去します。 \hat{x}(\tau) の式から

 \displaystyle
    1 - e^{-\tau} = \frac{\hat{x}}{\cos\theta}, \quad \tau = - \log \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta}\biggr)

と変形できるので,それぞれを  \hat{y}(\tau) の式に代入することで

 \displaystyle
    \hat{y} = (1 + r\sin\theta)\frac{\hat{x}}{\cos\theta} + \log \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta}\biggr)

を得ます。よって,この式で  \hat{y}=0 とすることで,無次元化飛距離  \hat{x} の満たす方程式が得られます。

無次元化飛距離が満たす式
 \displaystyle
        0 = (1 + r\sin\theta)\frac{\hat{x}}{\cos\theta} + \log \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta}\biggr)
    \tag{2}

ただし, \hat{x}=0 は自明な解なので,以下では  \hat{x}\gt 0 とします。

このとき,投射角  \theta を決めてあげると,飛距離  \hat{x} は唯一つに定まります2。すなわち, \hat{x} \theta の関数と考えることができます。特に,最遠投射角  \theta _ m においては  \displaystyle\frac{d\hat{x}}{d\theta}(\theta  _ m)=0 を満たします。

このことに注意して,式  (2) の両辺を  \theta微分して  \theta=\theta _ m を代入すると

 \displaystyle
    0 = r\hat{x} + \frac{\hat{x}\sin\theta_m}{\cos^2\theta_m}\Biggl[1 + r\sin\theta_m - \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta_m}\biggr)^{-1}\Biggr]

を得ます。 \hat{x}\gt 0 なので,この式はさらに

 \displaystyle
    0 = r + \frac{\sin\theta_m}{\cos^2\theta_m}\Biggl[1 + r\sin\theta_m - \biggl(1 - \frac{\hat{x}}{\cos\theta_m}\biggr)^{-1}\Biggr]

と書けます。よって,この式を  \hat{x} について解き,改めて式  (2) に代入することで, \theta_m の満たす式が得られます。

最遠投射角が満たす式
 \displaystyle
        \biggl(1 + \frac{r}{\sin\theta_m}\biggr)\biggl[\log\biggl(1 + \frac{r}{\sin\theta_m}\biggr) - 1\biggr] = r^2 - 1
    \tag{3}

 r=1 の場合

 (3) の右辺が 0 となるので,この式を満たすのは

 \displaystyle
    1 + \frac{1}{\sin\theta_m} = 0 \quad \mathrm{or} \quad \log\biggl(1 + \frac{1}{\sin\theta_m}\biggr) = 1

のときです。ただし,左の式を満たす  \theta _ m は存在しないので,もし存在するならば右の式を満たします。そこで,右の式を  \sin\theta _ m について解くと

 \displaystyle
    \sin\theta_m = \frac{1}{e-1}

となり,これを満たす  \theta _ m は存在します。実際, \theta _ m\approx 35^\circ です。

 r \ne 1 の場合

 \displaystyle\rho:=1+\frac{r}{\sin\theta _ m} とおいて式  (3) を式変形していくと

 \displaystyle
    \frac{r^2-1}{\rho} e^{\frac{r^2-1}{\rho}} = \frac{r^2-1}{e}

とできます3

あいにく,ここから  \theta _ m について初等的に解くことはできませんが,Lambert の  W 関数4とよばれる特殊関数を用いても良いなら,次のようにして解くことができます。

(i) r ^ 2-1\gt 0 の場合

 \displaystyle
    \frac{r^2-1}{\rho} = W\biggl(\frac{r^2-1}{e}\biggr)

と表せるので,さらに計算していくことで

 \displaystyle
    \sin\theta_m = r\biggl(\frac{r^2-1}{W((r^2-1)e^{-1})} - 1\biggr)^{-1}

となります。 r ^ 2-1\gt 0 だったので, W を主枝  W_0 に代えても同じです。

(ii) r ^ 2-1\lt 0 の場合

 \displaystyle
    -1 \lt -\frac{1}{\rho} \lt \frac{r^2-1}{\rho} \lt 0

であることに注意すれば,主枝  W _ 0 を用いて

 \displaystyle
    \frac{r^2-1}{\rho} = W_0\biggl(\frac{r^2-1}{e}\biggr)

と表せます。よって,全く同様に

 \displaystyle
    \sin\theta_m = r\biggl(\frac{r^2-1}{W_0((r^2-1)e^{-1})} - 1\biggr)^{-1}

を得ます。

(i)と(ii)より, r\ne 1 の場合における最遠投射角  \theta _ m は次のように書けます。

最遠投射角の式
 \displaystyle
        \theta_m = \sin^{-1} \Biggl[ r\biggl(\frac{r^2-1}{W_0((r^2-1)e^{-1})} - 1\biggr)^{-1} \Biggr]

おわりに

かなり大変でしたが,空気抵抗がはたらく場合における最遠投射角の式を求めることができました。記事として書き直すために改めて自分でも計算していたんですが,過去の自分のモチベーションとか技巧に感心してしまいました。今の自分にできるとは到底思えないです。

ちなみに,いろんな数値で計算してみると分かりますが, \theta _ m が 45 \circ 以外になることは普通にあります。すなわち,空気抵抗を考慮した場合,一番よく飛ぶ角度は 45 \circ とは限らないということが分かります。

参考文献


  1.  \dot{x} x 軸方向の速度, \ddot{x} x 軸方向の加速度です。
  2.  \hat{y}(\tau) のグラフを描くと, \hat{y}=0 となる  \tau が 2 つ(一つは自明な解  \tau=0)あることが分かります。そして, \hat{x} \tau が一対一に対応していることから, \hat{y}=0 となる  \hat{x} も 2 つあります(一つは  \hat{x}=0)。
  3. 式変形の際, r ^ 2-1 の符号に注意する必要があります。
  4. 大雑把に言うと, y=xe ^ x逆関数  x=W(y) のことです。

紙を折りたいだけ折るために必要な紙の長さは?

※ 2021/4/12:一部の式を訂正しました。

こんにちは。Math。です。

つい先日,トイレットペーパーのストックが切れかけていたので,近所へ買い出しに行きました。今までは全く気にしたことがなかったんですが,あれって 1 ロール 50 m もあるんですね。驚きです…

それでふと,「紙は 10 回も折れない」という話を思い出しました。そして,「じゃあ逆に,10 回折ろうと思ったら何 m の長さが必要なんだろうか」という疑問が生まれました。

調べてみると,Britney Gallivan さんという方がすでに同じことをされていたようです。

さらに,この記事では「両端を折ることができない」という仮定の妥当性まで議論されていて,もはや私の出る幕はないんですが,せっかく思いついたことなので計算してみます。

問題の設定と結果

長さ  L,厚さ  t の紙を図 1 のように  n 回折ることを考えます。

f:id:MathMaru:20210410192452p:plain:w400
図 1.紙の折り方

これはちょうど,冒頭で紹介した記事の Fig.2 の折り方に該当します。軽く調べたところ,この折り方についての式は見当たらなかったので,以下ではこれについて計算していきます。

ここで,中央の平坦な部分の長さを  \ell とし,折り曲げた紙の長さは紙の外側を基準に測るものとします。

このとき,紙の長さ  L と折る回数  n の関係は次式で表せます。

紙の長さと折る回数の関係
 \displaystyle
        L = 2^n\ell + 2^{n-1}t + \frac{\pi t}{6}(2^n + 4)(2^n - 1) + \frac{t}{6}(2^n-4)(2^n-2)
証明

 n 回折られた紙を次の図 2 のように,いくつかの部分に分けて考えます。

f:id:MathMaru:20210410215742p:plain:w500
図 2.長さの求め方

図 1 と比較すると分かりやすいと思います。灰色部分は長さが  \ell の紙が  2 ^ n 枚積層した部分,赤色部分は半円状に曲がった紙が積層した部分,青色部分が灰色部分から少しはみ出た紙が積層した部分,緑色部分が紙の両端の部分です。

(i)灰色部分

長さ  \ell の紙が  2 ^ n 層あるので,この部分が占める紙の長さは  2 ^ n\ell です。

(ii)緑色部分

長さ  2 ^ {n-2}t の紙が  2 層あるので,この部分が占める紙の長さは  2 ^ {n-1}t です。

(iii)赤色部分

半円は小さい順に 1 層,2 層,4 層,8 層,…, 2 ^ {n-1} 層となっています。

f:id:MathMaru:20210410204955p:plain:w300
図 3.半円部分

ここで, 2 ^ k 層の半円が占める紙の長さを求めてみると

 \displaystyle
        \sum_{i=1}^{2^k} k \pi t = \frac{\pi t}{2}(4^k+2^k)

となります。よって,赤色部分が占める紙の長さは

 \displaystyle
        \sum_{k=0}^{n-1} \frac{\pi t}{2}(4^k+2^k) = \frac{\pi t}{6}(2^n + 4)(2^n - 1)

です。

(iv)青色部分

この部分は左から順に

 \displaystyle
        (\textbf{紙の長さ},\ \textbf{層の数}) = (2t,2),\ (4t,2+4),\ (8t,2+4+8),\ \ldots,\  (2^{n-2}t,2^{n-1}-2)

となっています。よって,この部分が占める紙の長さは

 \displaystyle
        \sum_{k=1}^{n-2} 2^kt \cdot (2^{k+1} - 2) = \frac{t}{6}(2^n-4)(2^n-2)

です。

したがって,(i)~(iv)を足し合わせることで,紙の全体の長さは

 \displaystyle
        L = 2^n\ell + 2^{n-1}t + \frac{\pi t}{6}(2^n + 4)(2^n - 1) + \frac{t}{6}(2^n-4)(2^n-2)

と求まります。■

必要な紙の長さ

図 1 の  \ell が 0 以上あれば,少なくとも  n 回は折ることができると考えられます。すなわち,紙の長さ  L

 \displaystyle
    L \ge 2^{n-1}t + \frac{\pi t}{6}(2^n + 4)(2^n - 1) + \frac{t}{6}(2^n-4)(2^n-2)

を満たせば, n 回折ることができると言えそうです。

実際に数値を代入して計算してみます。手元のものさしでトイレットペーパーを測ったところ,芯の直径が約 3.5 cm,紙の部分の厚さが約 3 cm でした。したがって,トイレットペーパーの厚さは約 0.12 mm(巻き数は約 244 回)と計算できます1

そこで,紙の厚さを 0.12 mm として,いくつかの  n に対して上式の右辺の値を求めると次のようになります。

表.折る回数と  L の最小値
 n 5 6 7 8 9 10 15 20
 L の最小値 8.9 cm 35 cm 1.4 m 5.5 m 22 m 87 m 89 km 91,075 km

地球一周が約 40,000 km なので,図 1 の方法で紙を 20 回折るためには地球 2 周分以上の長さが必要ということですね。そりゃ無理だ…

おわりに

というわけで,紙を折るために必要な紙の長さの式を導出してみました。注意しておくと,あくまでも図 1 の折り方に対するものなので,折り方を変えることで表の数値よりも短い紙で折ることができます2

内容自体は高校数学レベルなので難しくないんですが計算は複雑なので,もし間違いを見つけた方はご連絡ください。

それでは。

参考文献


  1. トイレットペーパーの厚さを  t mm,巻き数を  n 回とすると連立方程式が立てられます。ただし,自然数の総和が出てきます。
  2. 例えば,冒頭の記事の Fig.1 の折り方が該当します。

Fibonacci 数列の加法定理と階段

※ 2021/4/11:参考文献の閲覧日を追記しました。

こんにちは。Math。です。

花粉症が中々治まってくれません。ツラいです…

さて,人生 2 回目となる記事のテーマは 「Fibonacci 数列の加法定理」です。数式入力の練習を兼ねて書いていこうと思います。

いくつかのサイトを見ていると,この定理は数学的帰納法で証明されるようです。なので,ここでは趣向を変えて,Fibonacci 数列と階段との関係を用いて証明してみます。

Fibonacci 数列

あまりにも有名な数列なので,ここで説明する必要もない気がしますが,今回は数式入力の練習も兼ねているので書いておきます。

Fibonacci 数列

Fibonacci 数列  \{F _ n\} とは,


        F_1 = F_2 = 1, \quad F_{n+2} = F_{n+1} + F_n

で定まる数列のことです。

よく知られたように,1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, … と続きます。

さて,この Fibonacci 数列は次のような性質をもっています。

性質

 n 段の階段を 1 段または 2 段ずつ上る方法は  F _ {n+1} 通り。

0 段の階段はないので, n\ge 1 とします。

証明

 n 段の階段の上り方の数を  a _ n とおきます。 a _ 1=1 a _ 2=2 です。また,便宜上, a _ 0=1 と定めておきます。

次に, n+2 段の階段を次の 2 通りに分けて数えます。

(i)初めの 1 歩を 1 段で上る場合

この場合,残り  n+1 段を上ればよいので,その上り方は  a _ {n+1} 通りあります。

(ii)初めの 1 歩を 2 段で上る場合

この場合,残り  n 段を上ればよいので,その上り方は  a _ n 通りあります。

(i)と(ii)より, n+2 段の階段の上り方について  a _ {n+2}=a _ {n+1}+a _ n が成り立ちます。この漸化式は,Fibonacci 数列が満たす漸化式  F _ {n+2}=F _ {n+1}+F _ n と同じ形をしています。しかも  a _ 0=F _ 1=1 a _ 1=F _ 2=1 ですから,より一般に, a _ n=F _ {n+1} が成り立ちます。

したがって, n 段の階段の上り方は  F_{n+1} 通りです。■

この性質についてはさまざまなサイトで証明されているので,分かりづらかった方はそちらも参照していただければと思います。

ここでは,この性質を「階段性質」とよぶことにします。

加法定理

三角関数の加法定理のように,Fibonacci 数列にも加法定理が成り立ちます。

Fibonacci 数列の加法定理

        F_{m+n} = F_m F_{n+1} + F_{m-1} F_n

ただし,添え字が 0 以下とならないように  m\ge 2 n\ge 1 としておきます。

では早速,階段性質を用いて証明してみます。

証明

 m+n-1 段の階段を考えます。階段性質より,この階段の上り方は  F_{m+n} 通りです。これを次の 2 通りに分けて数えます。

(i) m-1 段目を踏む場合

階段性質より, m-1 段目までの上り方は  F_m 通りです。そこからさらに  m+n-1 段目までは  n 段上ればよいので,その上り方は  F_{n+1} 通りです。よって, m-1 段目を踏む場合の上り方は全部で  F _ mF _ {n+1} 通りあります。

(ii) m-1 段目を踏まない場合

階段性質より, m-2 段目までの上り方は  F_{m-1} 通りです。そこから  1 歩で  2 段上り, m 段目に来ます。そこから  m+n-1 段目までは  n-1 段上ればよいので,その上り方は  F_n 通りです。よって, m-1 段目を踏まない場合の上り方は全部で  F _ {m-1}F _ n 通りあります。

(i)と(ii)より, F _ {m+n}=F _ mF _ {n+1}+F _ {m-1}F _ n が成り立ったので証明できたと思いきや,これだけでは不十分です。

なぜなら, m=2 n=1 の場合,(i)や(ii)の中に 0 段の階段が登場してしまうからです。

よって,それらの場合だけ別に証明しておきます。

 m=2 の場合,

 \begin{aligned}
        \textbf{定理の左辺} &= F_{2+n} = F_{n+1} + F_n\\
        \textbf{定理の右辺} &= F_2 F_{n+1} + F_1 F_n = F_{n+1} + F_n
    \end{aligned}

となり,定理が成り立ちます。同様に, n=1 の場合,

 \begin{aligned}
        \textbf{定理の左辺} &= F_{m+1} = F_m + F_{m-1}\\
        \textbf{定理の右辺} &= F_m F_2 + F_{m-1} F_1 = F_m + F_{m-1}
    \end{aligned}

となり,定理が成り立ちます。

以上で, m \ge 2 n \ge 1 に対して加法定理が成り立ちます。■

おわりに

それにしても Fibonacci 数列,本当に有名ですね。少し調べるだけでも山ほど関連サイトが出てきます。中には中学入試に関するものもあって驚きました。

それだけ記事が書かれる理由はやはり,単純な数列に見えて実は,自然界の至るところに現れたり,黄金比と関係していたりと,とにかく関連する話題が尽きないからでしょうか。

数式入力の良い練習にもなったので,今回はこのあたりで失礼します。

参考文献

はじめてのブログ

アイサツはタイセツ

こんにちは。そして,はじめまして。Math。(ますまる)といいます。

近頃は少しずつ暖かい日が増えてきて,本当に嬉しいです。新年度が始まって一週間くらいが経ち,今日は街中で入学式帰りの学生と親御さんを見かけました。

春ですねぇ…

さて,今更ながら人と話す機会がめっきり減りまして,以前にも増して忘れっぽくなってきたので,アウトプットがてらブログを始めてみた次第です。

ブログは初めてで右も左も分からない私ですが,一歩一歩,着実に,更新していきたいと思います。

さてさて何を書いていこうか…

具体的な方針は決めていませんが,先ほども書いたように,ひとまずは私の頭の中をアウトプットしていきます。

私は数学が好きなので,恐らく,数学関係の話題が多くなると思います。ほかには日常で思ったことや感じたこと,好きな漫画や音楽とかについても書いていけたらなぁと思います。

おわりに

初めての記事投稿ということで,少ないですがこれくらいでご容赦くださいませ。

今はまだブログのデザインがあまりにもシンプルなので,もう少しだけ,ほんの少しだけ,オリジナリティを出してみたいです。

最後に,この記事を読んでくださった方,ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。